置き去りだった自分を取り戻す⸻『なぜ働いていると本が読めなくなるのか / 三宅香帆 著』感想

本、読めてますか?
僕は最近あまり本が読めていませんでした……。
でも、失くしていたのは読書の時間だけじゃなかったのかも。
これは、一冊の本をきっかけに、置き去りだった自分を迎えに行く話。
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部屋の片付けをしているとラッピングされたままのサイン本が発掘された。
本屋さんでウキウキ気分でサイン本を買っていたはずなのに、まだ読むどころかフィルムも剥がしてなかった……。
あぁ、最近全然本を読めてないなぁ……とひとりボヤく。
そして、よりにもよってその本のタイトルは
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』
まさに今の自分にぴったりの本だった。
きっと買った時も「最近本読めてないな〜」とか思いながら買ったんだと思う。
その時の僕はまだここに本と一緒に置き去りになっていた。
今読まないとまた本を読めない自分がこのまま続いていってしまう気がして、そっとフィルムを剥がしページをめくり始めた。
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今、書店に行くと読書にまつわる本がたくさん並んでいる。
速く本を読むための速読本や、本を読むと人生うまくいきますよ〜っというような本など。
みんな何かしら読書に興味や悩みがあるんだと思う。
そして、この本を読んで思ったのは本が読めないと思っているのは若者や現代人だけじゃないってこと。
スマホの普及とともに
「若者の読書離れ」って言葉を耳にすることもあるけど
「若者の読書離れ」って言葉はどうやら1970年代から言われ続けてるみたい。もう半世紀ちかく前から!
だから、本が読めないってのは自分や若者だけの悩みじゃないんだなぁって。
本が読めないというのは、みんなの悩みなんだ。
そして、本を読みたいという気持ちも、みんなの中にあるんだ。
少しだけ仲間が増えたような気持ち。
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著者の三宅香帆さんは本を読むのが大好きで、本代を稼ぐために就職したようなものなのにいつの間にか本が読めなくなっていたらしい。
本が読めないなんて、こんなのおかしい!
って会社を辞められたのだとか。
現在、文芸評論家として活躍されている三宅香帆さんも働きながら本を読むことの難しさを感じられていたのだから僕が読めなくなっていたのもある意味仕方がないことなのかも。
では、どうして働きながら読書することが難しいのか。
どうすれば読めるようになるのか。
本を読める自分に戻りたい。
そういう思いでページを進めていった。
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読書はノイズ?
帰ってからスマホを触ってSNSを見る時間はあるのに読書はできない。そんなジレンマ、僕もあるある。
スクロールすれば自分がフォローしている推しや、同志たちの投稿を見ることができる。
またアルゴリズムによって、自分が興味ありそうな投稿もどんどん流れてくる。
ちょっと夕食後にSNSを見ようと思っただけで数時間経ってしまっていることも・・・・・・。
スマホは触れられるのに本が読めない。
わがままで怠惰な自分にがっかりする日々。
本書では三宅香帆さんが“ 読書はノイズ? ”という問いかけがあった。
毎日、インターネットやスマホ、SNSの情報に溢れた世界の中で多忙感に駆られる現代人にとって、自分が欲しい情報以外はノイズになりつつあるなって。
スマホで自分が知りたいことを調べるとスッと欲しい情報が出てくる。チャッピーに聞いても要点だけをまとめて答えてくれる。
そんな世界の中で読書っていうと、自分が欲しい情報が入っているかどうかも読むまで分からないギャンブル性があるし、欲しい情報以外の“ 不純物 ”も含まれている。
日々、情報に溢れている僕たちにとって、それらはノイズに感じてしまい手を付けづらいものになってしまっているのかも知れないなって思ってしまった。
そのことに妙に納得してしまって、どうしようもないんじゃないかと受け入れてしまう僕もいた。
「読書できない自分を変える方法」が知りたくて読み始めたのに、「これって、どうしようもないんじゃない?」と逆に焦ってしまう僕。
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全身全霊ではなく半身で働く
本を読むと
他者の文脈に触れることができる。
仕事に全身全霊で取り組んでいると、他者の文脈に触れる余裕がなくなる。自分のことでいっぱいいっぱいだからだ。
自分に関係あるものだけを求めて、逆に自分に関係のないものをノイズとして認識し遠ざけてしまう。
そういう状況こそが、働きながら本を読むことを難しくしているのだと。
作者の三宅香帆さんは
働きながら本を読める社会をつくるために
“ 全身全霊で働く ”ことだけが称賛される社会ではなく
“ 半身で働く ”ことができる社会の重要性を伝えていた。
半身で働くって、別に仕事を手抜きするって意味じゃない。
それは「仕事以外にも自分の人生がある」と認めることだと思う。
本を読む人も、ゲームをする人も、ライブへ行く人も、そういう余白があるからこそ、また仕事にも戻ってこられる。
今回、『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』を読んで思ったのは、単純に“働きながらでも読書できるようになる即スキル!”みたいな小手先テクニック本ではなかったってこと。
大衆が本を読めるようになった歴史や、その時代ごとにどんな本が好まれてきたのかまで描かれている。
思っていたよりずっとスケールの大きい、とても面白くて骨太な一冊だった。
あと、これは読書だけに限る話じゃないなと感じた。
社会人になるまでゲームが好きだったのに働くと遊ばなくなってしまった人。
社会人になるまで推し活に励んでいたのに働くと推しを追いかける余裕がなくなってしまった人。
などなど、
働き出してからなんか自分の時間が作れていない人にも刺さる内容だと思う。
部屋のどこかに買ったまま読めていない本が眠っている人へ。
その本を読む時間を取り戻すことは、本を読む時間だけじゃなく、自分自身を取り戻すことなのかもしれない。
僕にとっては、読書だけじゃなく「生き方」を考え直す一冊になった。
さ、置き去りだった自分を迎えに行くぞ〜!!





